家を買ったばかりで転勤が決まってしまった
単身赴任よりも家族で暮らしたい。家はどうしたら……
急な引っ越しで持ち家を売るか貸すかの選択を迫られるのは転勤族でよく聞きますが、最終的に持ち家をどうするのかは、以下の3つしか選択肢がありません。
1 貸す
2 売る
3 空き家にする
番外で単身赴任をするという選択肢もありますね
東急住宅リースの「ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査2020」によると、転勤時の持ち家の対処法で、最も多かったのは「身内以外に貸した」で34%でした。「空き家」も31%と多めで、「売却」は20%です。
ただ、持ち家を売ったり貸したりするタイミングは家族の年齢や転勤から戻る時期、住宅ローンの残高などの状況で大きく変わるものですよね。
この記事では、貸す、売る、空き家にするのそれぞれについてメリットとデメリットを考え、各個人の状況に応じた結論を導きやすくしています。
転勤によって訪れる新天地での生活に慣れるのも大変です。納得のいく形で持ち家を処理して新生活に専念してください。
転勤時に家をどうするかの判断基準6つ
転勤する人が持ち家をどうするかの判断基準は以下のようなものがあります。
1 転勤から戻るまでの期間
2 住宅ローン残高
3 購入後の物件価格
4 貸しやすい物件か
5 家族の年齢や状況
6 転勤先の場所
結論を言えば、1年や2年で戻ることが決まっているなら、空き家にして所有し続けるのが現実的。
2年を超える期間の場合、戻る時期がはっきりしているなら賃貸を、はっきりしていないなら売却を検討するのが現実的でしょう。
ただし、いずれの場合も、住宅ローンの残高や物件価格、賃貸しやすい立地であるかなどさまざまな角度から検討することが大切です。以下でそれぞれを解説します。
転勤から戻るまでの期間
転勤先から戻るのが1年後や2年後だと決まっていれば、貸すにしては期間が短くて借主が見つかりにくい可能性が高くなります。
売るまでもない期間といえますので、空き家にし続けるのが現実的ですね。
ただ、その間は家賃がない中で住宅ローンの返済や固定資産税などを負担し続けなければなりません。十分な余剰資金が必要になります。
住宅ローンの残高
持ち家を購入するときに借りた住宅ローンの残高は、転勤から戻るまでの期間と同じくらい最優先で考えないといけない項目です。
住宅は買った瞬間に中古物件となって大きく値下がりします。頭金をそれほど入れていなければ、売却額より住宅ローンの残債が多くなる可能性が高いですよね。
この場合、そもそも売る選択肢を選ぶ可能性は小さく、また家賃収入がない空き家にもしにくいので、賃貸しか手段がない可能性が出てきます。
購入後の物件価格
住宅ローン残高とセットで考える必要があるのが物件価格です。
購入した持ち家が、所有を始めてからどのような値動きをしているか。ネットで同じ地域の似たような物件の売り出し価格をみてみることで把握できます。
ちなみに僕が以前マンションを人に貸したときに一応売却額を査定してもらったところ、2009年の購入から約3、4年たった状態で購入額から500万円ほど値下がりしていました。
当時は査定額が予想より低かったこともあり、貸すことにしたのですが、約3年後に同じ会社に再び査定をしてもらったところ、500万円ほど上昇しており、ほぼ購入額で市場に出せました。
値動きは政治経済とも連動するので環境変化に敏感になることが大切です。
貸しやすい物件か
売らずに貸すことにしたところで、借り手がつかないことにはどうしようもありません。
最寄り駅からの距離、買い物の利便性、学校環境などを考え、借り手がつきやすいかどうかを考える必要があります。
自分の家族の年齢や状況
家族がいる人は持ち家をどう処理するかを考えるときに子どもの年齢は外せません。
中学校や高校、大学に通うなら、何度も一緒に引っ越しはできないですよね。
転勤先との距離
持ち家を売ったり貸したりせずに所有し続ける場合、物件の換気や管理組合の会合など、物件を適切に管理する必要に迫られます。
この場合、東京から北海道など、距離がありすぎるととても不便です。
簡単な管理を親族にお願いできる場合もあるでしょうが、よほど関係が近しい人でないと頼みにくいですね。
賃貸にした場合も、修繕などで物件を見に行ける方がなにかと便利です。
転勤時に家を貸すメリットとデメリット
家を人に貸すメリット
持ち家を人に貸すメリットは以下の通りです。
冒頭の東急住宅リースの調査では、 転勤時に持ち家を賃貸することのメリットの 1 位が「家賃収入が得られる」で65%(複数回答)でした。
住宅ローンが残っている人なら返済原資に回せるし、ローン完済済みならそのまま不動産収入になります。
得られた家賃収入を元手に、新しい自宅や収益不動産を購入することも可能ですよね。
2位が「元の勤務地に戻った時にまた住める」で40%。気に入った地域だから思い切って戸建てやマンションを購入するわけですから、いずれ戻ってこられる家を確保しておくことは重要ですよね。
このほか、空き家とせずに人が住むことで老朽化防止につながるメリットも指摘されます。
人が住んでいれば、家自体や設備の劣化がすぐに分かって修理することができますし、また日常的に喚起されることでカビの発生による劣化の進行を防ぐこともできます。
実際に持ち家を賃貸に出したことがある僕が感じたメリットが、新しい知識が身につくことです
家を貸すと、一般のサラリーマンにはあまり縁がない確定申告をする必要がでてきます。サラリーマンは年末調整という仕組みがあるため確定申告の面倒な手続きが免除されています。
年末調整はとても便利な制度である半面、税の仕組みや所得に対して学ぶ機会を減らします。サラリーマンの盲点かもしれません。
家を人に貸すデメリット
家を貸すデメリットは以下の通りです。
勉強になることの裏返しなのですが、貸してみてわかったのは、人に不動産を貸すということは、いろいろな手間とコストがかかるということ。
管理会社とのやり取りや確定申告、修繕要望に対する対応など、考えたり、時間を使ったりすることが多いです。
入居者からのクレームやトラブルの恐れがあるのも事実です。エアコンが壊れた、水漏れがあるなどの連絡ならまだよいのですが、近隣住民とのトラブルなどの可能性もあることも頭に入れる必要があります。
また、必ずしも入居者がすぐに決まるわけではないということも念頭に入れ、ローン返済があるなら金銭的な確保も考えないといけませんよね。
僕の場合は夏の転勤だったこともあり、募集を始めてから入居者が決まるまでかかって期間は3カ月くらい。もちろんその間は家賃ゼロです。やっと入居したと思っても転勤などで突然退去することもありえますから、常に安定はないと思った方が無難でしょう。
さらに、住宅ローンは本人や家族が住むための家を購入するために借りるお金です。転勤で人に貸すことになった場合、ローンの規約違反にならないか、金融機関への確認が必要です。
転勤時に家を売るメリットとデメリット
家を売却するメリット
持ち家を売却するメリットには以下があります。
住宅ローンを完済している人、あるいは売却で完済できる人なら、不動産を現金化することによるメリットがあります。
2013年以降の大規模金融緩和で不動産価格の上昇が続きました。特に第2次安倍政権誕生前にマンションや戸建てを買った人だったらこの恩恵が大きいのではないでしょうか。
家を手放すことによって、賃貸しているときの入居者や仲介業者とのやり取りや設備の修繕など、手間やコストがなくなるのをメリットと感じる人も多いでしょう。
建物は古くなればなるほど不具合が出てきます。空き家にしている場合もカビを防ぐために定期的に喚起をしなければなりませんし、水道管の劣化を防ぐために水を流さなければなりません。売却すればそういう心配は必要なくなります。
マイホームを所有していると固定資産税や修繕費用などのコストがかかります。マンションなら管理費や修繕積立金が毎月かかり、戸建てでも将来の外壁や屋根の塗装、水回りの修繕といった出費にそなえた準備が必要です。これらも売却によって考えなくてよくなるのは大きいですね。
マンションの場合、最近は管理会社による値上げ要請や管理の更新拒否といった事例も増えています。管理人さんの人手不足や人件費上昇などが影響しており、将来的な負担増も予想されます。
また、マンションではなく戸建てに住みたい、戸建てではなくマンションに住みたいといった考えの変化、周辺環境の変化などで住み替えを検討している人は、売却して住宅ローンを返済することで、実現が見えてきますよね。
家を売却するデメリット
持ち家を手放すデメリットは以下の通りです。
家賃輸入が住宅ローンの返済額など支出よりも多い状態なら、売却で利益がなくなる痛手を受けます。
また、持ち家を売るときには、売買契約書への印紙税や、不動産業者への仲介料といった費用が必要になります。
印紙税は数千円〜数万円ですみますが、仲介料は数十万円以上かかります。
仲介料は、買い手をみつけてくれた不動産業者への報酬です。宅地建物取引業法で上限が決まっており、たとえば、400万円超の売買場合は、その取引額の「3%以内」などとなっています。
仲介料の上限額の計算方法
・200万円以下の部分 取引額の5%以内
・200万円超400万円以下の部分 取引額の4%以内
・400万円超の部分 取引額の3%以内
たとえば売買価格が3000万円だった場合は、200万円までの部分が10万円、次の200万円の部分が8万円、400万円超の部分である2600万円の部分が78万円です。これを合計して96万円となります。
ちなみに、この計算は以下のようにまとめられます。
売却のデメリットとしては、売れ残りのリスクを避けては通れません。
僕がマンションを売ったときは、買い主の募集を始めてから1、2カ月は内覧がなく、初めてのことなどで本当にやきもきしてしまいました。
心配になってネットで調べると、半年から1年程度は様子をみないとけないという情報も出てきます。気長に待つしかないと思う一方で、売りに出している間も当然ローンの返済期日は毎月きます。
あせってはいけないといい聞かせても、お金がかかわるのでモヤモヤします。
売れ残るリスク要因としては、価格が高い、立地や間取りなど物件の人気がない、業者の力不足などいろいろ考えられますが、買い手がいてこその売却。運任せという面は否めないと思います。
売れ残りのリスクを踏まえて、ローン返済がどこまでなら許容できるかということを事前に考えておく必要があります。
(補足)売却の流れ
- 売り出し価格を査定してもらう
- 媒介契約を結ぶ
- 売却活動を始めてもらう
- 問い合わせや内覧を受ける
- 売買契約を結ぶ
- 引き渡し
持ち家を売るには、まず価格査定から始まります。査定は急いでいる場合以外は、複数の不動産会社に依頼するのがセオリーです。
依頼する不動産業者を決めて仲介業務を依頼する「媒介契約」を結んだら、売却活動を始めてもらいます
最初はなかなか問い合わせがなくて心配になりますが、まずは1、2カ月待ちます。反応が薄いと不動産業者さんから値下げの提案がくるかもしません。下げるとすぐに買い手がつく可能性もあります。
買い手がつくとうれしいのですが、早すぎると「こんなに下げなければよかった」と後悔するかもしれません。周辺の相場動向もにらみながら、慎重に判断しましょう。
転勤時に空き家にするメリットとデメリット
家を空き家にするメリット
持ち家を空き家にしていると、いつでも戻れることや、賃貸や売却の手間がかからないことがメリットになります。
転勤が短期間で終わることがあらかじめ分かっている場合は安心して空き家にできますよね。
賃貸や売却は大きなお金がからむことなのでストレスも大きいものです。
あれこれ不安になるのを避けるためにも空き家にするメリットは大きくなります。
家を空き家にするデメリット
一方で、持ち家を空き家にすると、固定資産税や修繕費などのコストがかさむことがあります。
定期的に窓を開けて換気したり、キッチンやトイレの水を流したりといったメンテナンスが不可欠です。遠方に転勤になった場合は親族や知人に依頼するなど、気を遣う場面も多そうです。
注意が必要なのは、固定資産税の軽減特例がなくなる「特定空き家」に指定されること。
まず、不動産にかかる固定資産税は以下の通り計算されます。
住宅用地の場合、200平方メートル以下の部分は評価額が6分の1に、200平方メートル超の部分は3分の1に減額されます。
ただ、空き家の増加で周辺環境が悪化したり倒壊や火災などの危険が高まるため、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が平成27年に施行されました。
これにより、保安上著しく危険となるおそれや、景観を著しく損なっている場合などに「特定空き家」に指定されることになったのです。
特定空き家に指定されても改善がみられない場合には、住宅用地特例の対象から除外され固定資産税が大幅に増えることになります。
【転勤で家をどうする】まとめ
転勤が決まったときに持ち家をどうするか。僕も含めて転勤族にとっては切っても切り離せない問題です。
僕は一度賃貸に出したマンションを、入居者が退去した後に売却しました。賃貸の手間やコスト、現地に戻る時期などを考慮した結果ですが、貸すにしろ売るにしろ不動産業者さんの存在は重要です。
業者さんを選ぶ際には、こちらの気持ちを汲み取ってくれるか、横柄な態度はないか、地域の事情に詳しいか、連絡が早いかなど、さまざまな角度から検討することをおすすめします。
今回は以上です。ありがとうございました!
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