文章を書くとき、書き出しが分からなくて手が止まる
「文章が分かりにくい」とダメ出しされて萎える
新聞記者式で解決しましょう
企画書や稟議書、レポートやブログ記事……。どんなタイプの文章でも、分かりやすく早く書けるに越したことはありませんよね。
文章は「型」を覚えると書く速度が上がります。
今回紹介する「即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術」では、生産性を上げる文章の書き方がかみ砕いて説明されていますよ。著者は日本経済新聞の白鳥和生さん。
僕自身もそうでしたが、新聞記者は「中学生にも分かるように書け」と言われて育てられます。育てられるというのは実は正しくなくて、あまり積極的には育ててくれません。自分で書いて書いて書きまくることで自然に身についてきた技術です。
とはいえ、文章を書くことが仕事だという人はごく少数ですよね。そんないつも書くことだけに時間を使えません。だとすれば、たくさん文章を書いてきた人が身に着けた技術を手っ取り早くマネするのが最善です。
白鳥さんは記者として1万以上の記事を書いてきた超ベテラン。本書でも自身が新人のころの失敗例を紹介してくれるなど経験に裏付けられた分かりやすい文章術を学べますよ。
書籍名
即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術
著者
白鳥 和生
発行元
CCCメディアハウス
発行日
2021年7月30日
ページ数
214ページ
著者の白鳥さんは日経の超ベテラン記者
「即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術」の著者の白鳥さんは、日本経済新聞社で長年記事を書き続けた方です。刊行時の肩書は「編集総合編集センター調査グループ次長」。
明治学院大学国際学部を卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社しました。主に取材してきた分野は、小売や卸・物流、外食、食品メーカーなど。いわゆる流通分野のエキスパートですね。消費生活アドバイザーの資格を持つほか、日本フードサービス学会理事なども務めました。
共著で「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)、「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)、「流通と小売経営」(創成社)などがあります。
「即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術」の概要
「即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術」はタイトル通り、簡単に伝わる文章を書くために新聞記者のテクニックを役立てよう、という趣旨で書かれた本です。
まず、白鳥さんが伝わる文章で重視するのは以下の3つの要素です。
ファクト 客観的事実
データ 数字
ロジック 論理
「その記事を書くのはいいけどファクトは何だ」「ファクトを言え、ファクトを!」。僕も記者として未熟なころ、よく先輩に詰められた記憶があります(汗)。
ファクトがない記事はただのコラムであったり持論の展開、推測記事にすぎません。「伝わる文章」という観点からは、はずせない要素です。
データはファクトを支えたりより理解しやすくしたりする大事な要素。そして、ロジックがめちゃくちゃだったらいくらファクトやデータがよくても伝わりません。
本書はこの3つの要素に主眼を置きながら、全8章構成で展開されます。
文章の型と構成に続いて、ファクトと数字の重要性を解説。そしてロジックについて詳しく説明してくれています。
本書の特徴は、文章術そのものだけでなく、「じゃあデータはどんなものが必要なの」「そのデータはどこから引くの」といった疑問に対し、実戦的な方法も紹介してくれている点です。
8章には文章の書き方の練習問題も盛り込まれています。あなたの実際の仕事をイメージしながら業務に必要な文章に生かせる方法です。ぜひ挑戦してみてください!
「即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術」のポイント3つ
本書では「ファクト・客観的事実」「データ・数字」「ロジック・論理」こそが伝わる文章になくてはならない要素であることが繰り返し強調されています。
そのうえで、分かりやすい文章のコツについて、型や構成、ファクトの重要性などに分けて各章で紹介しています。ここでは、僕が感じたポイントを3つだけ書かせてもらいますね。
文章は書き出しがすべて
多くの文章は、大半の人には読まれないもの。Twitterもブログも新聞記事だってそうですよね。読んでくれているのはごく一部の読者だけです。
言ってみれば、読んでほしい人が読んでくれていればそれでよいのです。ただし、読んでほしい人にも読まれないと、それは悲劇(涙)。その状態を避けるのが書き出しに全てをかけることなんですね。
書き出しを大事にするという感覚からすれば、学校で習った「起承転結」は使えません。結論が一番最後に置かれるからです。
著者の白鳥さんは「最初の3行が勝負」と強調しています。
誰かの言葉から書き始める
例・「〇〇は大切だよね」
象徴的なエピソードから書く
例・僕は突然、妻から離婚届けを突きつけられた
読者への質問から書く
例・ブログを始めるために必要なスキルは何かを知っていますか?
注意を引く言葉から書く
例・炎上覚悟で言います
上に書いたのは、僕が思う文章の書き出しで読者に読まれそうな型です。
似ている部分もありますが、白鳥さんは本書で導入部の工夫として「読み手に問いかけ、考えさせる」など5つの方法をおすすめにあげています。とても参考になりますよ。
このほかにも、伝わる文章をつくるためには「型」が大切。主語や述語、助詞の使い方なども詳しく解説してくれています。
新聞記事の型「逆三角形」はかなり万能
読まれないことが前提の文章で、読んでもらう可能性を上げるために重要なのが「構成」です。
白鳥さんは、新聞記事の書き方が参考になると強調しています。僕もまったくそう思います。
そもそも新聞はWebと違って文字を収容するスペースに限りがあります。限りがある中で大事な要素をいかに盛り込むか、長年の知恵が反映されているのが新聞記事です。
最大の特徴は「逆三角形」の文章構造。記事のリード文、つまり第1段落には、その記事に必要な要素がすべて詰め込まれているのが普通です。いわゆる5W1H。
When いつ
Where どこで
Who だれが
What なにを
Why なぜ
How どのように
これらがすべて盛り込まれたリード文に続き、優先度の高い順番に2段落目、3段落目と続いていくのです。
ちなみに、逆三角形は伝わりやすい文章を書くコツでもありますが、新聞社側の視点では、紙面が限られている中であふれた文章を後ろから機械的に削りやすいという、都合が良い面もあります。
ファクトは何だ?データはあるのか?
伝わる文章とは、読んで納得できる文章のことですよね。納得できる文章にするには、ファクトが欠かせません。ファクトとは事実のこと。データに裏打ちされた事実を元に書かれた文章はやっぱり説得力が違います。
そして、ファクトを裏付けるデータには信頼性が不可欠です。それは公的機関や専門家が研究した数字が分かりやすいですね。
僕は20年近く報道機関で記者として働きましたが、1000文字以上の長文を書くときにまずはずせない要素の一つがデータです。数字があることで具体的にイメージしやすくなります。
本書では、割り算などを使って数字をいろんな角度から眺めることで説得力を増す方法を解説してくれていました。
たとえば、ある商品について職場で100人にアンケートをとったところ、50人が使っていたとします。その表現が「職場で50人が使っている」と「2人に1人が使っている」では印象が変わりますよね。
文章を書くにあたって見出しやタイトルを決めた。構成も考えた。でも何かぼやっとしている。そんなときは、その記事の背景となるファクトは何だったのか、伝えたいことは何だったのかをもう一度考えてみましょう。
ちなみに長文を書くにあたってファクトとデータと合わせて気をつけて盛り込むようにするものがあります。
それは、ファクトに関連した象徴的な場面・エピソードだったり、専門家の見解だったりします。エピソードがある方が印象に残りますし、専門家が補強してくれれば信頼性がさらに増しますね。
まとめ・新聞記者になり切って文章を簡潔に書こう
ここまで書籍「即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術」に沿って分かりやすい文章を書くコツを紹介してきました。
この記事で紹介したポイントのほかにもロジック・論理展開が重要です。
文章は段落を入れ替えるだけで一気に分かりやすくなることがあります。
それは読んでいる人の頭の中にすっと入ってくる展開に変えられたということ。推こうしていて「分かりにくいかも」と感じたら、話の流れに合わせて段落を入れ替えると意外に分かりやすくなるかもしれません。
新聞記者も一度で良い文章が書けるわけではありません。一度書いた文章を切り貼りしながらようやく仕上げていくのです。記者式の文章術を書いた本書で学び、書いて書いて書きまくりましょう。
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