不動産投資のゴールは決めた方がいい?
勢いで買っちゃったけど、次はどうするべきなのか……
私は10年で8棟と定めました!
大きなお金を投じる不動産投資では、目標設定が不可欠です。そして目標は人それぞれ。ゴールテープを置く場所は違って当然です。
ちなみに今50歳手前の私の場合は、「60歳までに8棟所有」という目標を掲げています。
「それ欲張りすぎじゃない?」と思う方もいれば、「えっ、それだけ?もっといけるでしょ」と感じる方もいるでしょう。それこそ「千差万別」というやつです。
この記事では私のケースを例にしながら、不動産投資のゴールの種類や、ロードマップづくりを紹介します。
銀行員時代に不動産鑑定士試験に合格し、十数件の投資物件を運用した不動産ライターの考えです。よかったらお目通しください!
不動産投資におけるゴール設定の意義
何をするにもゴール設定は大切です。明確な目標がないままでは、地図を持たずに宝探しをするみたいに、きっと迷子になっちゃいます。
逆にゴールがなければ、行き当たりばったりで物件を買って後悔する可能性もあるでしょう。
こんな状態が目に浮かびます。
やっぱり重要なのが具体的なゴール設定です。例えば、私の場合は「60歳までに8棟のアパートを所有し、月200万円の家賃収入を得る」という目標を立てました。このゴールがあることで、次のようなメリットが生まれます。
もちろん、最初から完璧なゴールを設定する必要はないと思います。
勉強を重ね、経験を積むうちに、より具体的で魅力的なゴールに進化させられるはずです。
不動産投資のゴールの種類
不動産投資のゴールは、人それぞれの状況や夢によって異なります。ここでは、一般的な目標から個人的な人生設計まで、さまざまな不動産投資のゴールの種類を紹介します。
安定した副収入で生活水準を上げる
安定した副収入の確保は、多くの人が不動産投資に求める最も一般的なゴールでしょう。毎月の家賃収入は、本業の給与とは別の収入源となり、生活水準の向上につながります。
例えば家賃収入から管理委託料や税金を支払い、さらに予期せぬ修繕などに備えて資金を確保しておいても、なお月10万円の余裕があるとします。
もし10万円あれば、家族で外食を楽しんだり、旅行したりもできますね。趣味の資金も充実させられます。将来的に会社員としての給与収入が減少しても、副収入があれば生活の安定性を確保することもできるでしょう。
とはいえ、投資初期は家賃収入を生活費に回すのは得策ではありません。
むしろ、この収入を次の物件購入のための軍資金として貯めるべきだと考えています。
投資規模を拡大し、将来的により大きな収入を得る基盤を作るー。副業収入が増えてくると「ちょっと贅沢しようかな」と思いがちですが、ここはガマンの時期だと思っています。
資産形成と資産価値の向上
不動産投資は長期的な資産形成の手段として期待できます。土地は過疎化が進んでいなければ価値が維持される可能性が高く、建物も適切に管理すれば何十年も問題なく使えます。
私も2010年ごろ購入したマンションを8年ほどして売りに出したところ、買値に近い額で売れました。事情があって売却を急いでいたのですが、その後の市況を踏まえると、もう少し待っていたら買値を上回ったはずです。
家賃収入をしっかり貯めて再投資することで、さらなる資産拡大も可能です。不動産投資は単なる収入源だけでなく、将来の財産づくりにも貢献する魅力的な選択肢になります。
老後の生活のため
老後の生活設計は、不動産投資の重要なゴールの一つです。
総務省統計局の家計調査年報(2023年 家計の概要19P)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の1カ月の生活費は28.2万円、単身の無職世帯は15.7万円でした。
夫婦のみの無職世帯の内訳をみると、次の結果となっています。
65歳以上夫婦のみの無職世帯の家計支出
支出項目 | 万円 |
食料 | 7.2 |
住居 | 1.6 |
光熱・水道 | 2.2 |
家具・家事用品 | 1 |
被服および履物 | 0.5 |
保健医療 | 1.6 |
交通・通信 | 3 |
教養娯楽 | 2.4 |
その他の消費支出(交際費など) | 5 |
非消費支出(直接税・社会保険料) | 3.1 |
合計 | 28.2 |
※端数切捨て
これに対して年金などの社会保障給付は21.8万円です。
ぜんぜん足りていませんね……。
足りない分は、働いて稼いだり、貯蓄を取り崩したりするわけですが、それもいつまでも続けるわけにはいきません。そこを不動産投資で補える可能性があります。
もちろん、いまの年金制度が同水準で続くとはちょっと考えにくいので、なおさら収入源を確保しておく必要がありますね。
子どもの教育資金の確保
子どもの教育資金の確保は、多くの親にとって大きな関心事です。
文部科学省の子供の学習費調査(2021年度)によると、子ども1人の幼稚園から高校までの学習費は、
- すべて公立の場合で約157万円
- すべて私立の場合で約446万円
でした。
さらに、日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果」(2021年度)では、大学の入学費用と在学費用は、
- 国立大で481万円
- 私立大文系で690万円
- 私立大理系で822万円
もかかります。
つまり、幼稚園から大学卒業まで、600万~1300万円は要することになります。
生まれてから大学卒業まで22年とすると、ならせば年間30万~60万円です。
つまり、毎月3万~5万円程度の家賃収入が、子供を育てる支えになる計算です。
早期リタイアの実現
「早期リタイア」。なんていい響きでしょう。
サラリーマンならだれでもあこがれる言葉ではないでしょうか。
60歳や65歳で普通に定年退職する年齢より早く、例えば50歳や55歳で仕事を辞め、自由な生活を送れたらどんなにすばらしいことか。
このゴールを達成するには、生活費を十分にカバーできる家賃収入が必要です。例えばもし融資を完済したアパートがある場合、月30万円の家賃収入があれば、管理費や軽い修繕、税金などの必要経費を除いた手取りはだいたい8割程度の24万円程度でしょう。
空室リスクや大規模修繕への備えも必要なのでもっと収入はほしいところですが、ほかに蓄えがあれば生活できそうです。
経済的自由の実現
経済的自由の実現は、不動産投資の究極のゴールといえるでしょう。これは単に仕事を辞めることではなく、望む生活水準を働くことなく維持できる状態を指すからです。
例えば、将来夫婦2人暮らしになった場合、融資の元利金返済をのぞいて月50万円の家賃収入があれば、贅沢をしないなら日々の生活費だけでなく、趣味や旅行、自己投資など、たのしい人生を送れる気がします。
税金対策
人によっては、不動産投資を税金対策として行うケースもあります。分かりやすいのは所得税です。
具体的には以下のような仕組みになります。
築古物件の減価償却費を活用した節税
建物の価値は年々減少すると考えられています。この減少分を「減価償却費」として経費に計上できます。
例えば、私の2棟目の木造アパートの場合、建物価格は約1,000万円でした。法定耐用年数(22年)は大きく超えていて減価償却費を計算する耐用年数は4年になるため、毎年の減価償却費は250万円(=1,000万円 ÷ 4年)ほどになります。
減価償却費のほか、ローン金利や固定資産税、管理費、修繕費なども経費として計上し、家賃収入から差し引いた結果(これを損益通算といいます)、赤字になることで、節税効果が出てきます。
例えば不動産所得の赤字が50万円だった場合、給与所得など他の所得が合計800万円なら損益通算すると、税率をかける所得の額が750万円まで圧縮されることになるのです。
減価償却費は計上時点でお金が出ていくわけではありません。なのに税金を抑える効果があるのが魅力となっています。
相続税を抑える効果もあるが……
また、不動産投資は、相続税対策としても有効です。相続税の基礎控除額を大きく超えて資産がある場合、金融資産を持っているより不動産の方が相続税計算の基礎となる評価額が小さくなるからです。
ただし、税金対策だけを目的とした投資は危険です。
そもそもふつうのサラリーマンなら、相続税はかかっても大きな額になりません。所得税の節税効果は、経費が多い購入年などわずかな期間に限られます。
あくまでも収益性の高い物件を選び、副次的な効果として税金対策を考えるのが賢明でしょう。
自分だけのゴールを見つけ、ロードマップを描こう
不動産投資のゴールは(お金にまつわることが多いですが)目指す方向は人それぞれです。そして、自分に合った目標を見つけることが成功への第一歩。自分だけの不動産投資ゴールを見つけるための具体的な方法を考えます。
まずは将来の希望をふまえて具体的な目標を定める
自分だけのゴールを見つけるには、まず自己分析が欠かせません。現在の収入、貯蓄、負債などの経済状況を正確に把握しましょう。同時に、5年後、10年後、そして老後にどんな生活を送りたいか、イメージします。
私の場合の将来の希望は「60歳以降も生き生きした人生を送ること」です。おそらく、いまの会社員人生を送っても、50代は生き生きと働けます。
でも、その後はどうか。
長く勤めた会社を離れたとき、果たして元気に過ごせるか。こんな不安があります。不動産賃貸経営を通して生き生きした人生を送ること。これが私の不動産投資をする意味です。
そのためにアパート経営のみで暮らせる状態をつくろうと考えました。
もうすぐで50歳になる私の場合、まずは約10年後の60歳の状態を考えます。
そのころになると子どもは独立しているでしょうから夫婦2人です。
総務省統計局の家計調査年報(2023年)では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の1カ月の生活費は28.2万円。物価高が続くことや、すこし余裕を持つことを考えて40万円必要になると仮定してみます。
月々40万円の手取りを仮に家賃収入で賄う場合を考えました。
- 家賃収入のうち4、5割は借入金の返済に回る
- 家賃収入のうち2、3割は修繕や管理費、固定資産税などもろもろの経費になる
- つまり家賃収入のうち、手残りは2~4割程度
以上の傾向に当てはめると、家賃収入のうち自由に使えるお金は少なく見積もって2割です。
つまり、毎月40万円を確保するには月200万円のお家賃が必要となります。
私が現在所有しているアパートの月収は、
- 1号アパート:約21万円
- 2号アパート:約34万円
となっています。
単純計算で平均27万円。売却を考慮しなければ、200万円になるには合計7、8棟のアパートが必要となるということが分かりました。
200万円 ÷ 27万円=7.4棟
次に目標達成に向けたロードマップを作る
具体的な目標が定まったら、次はその実現に向けたロードマップを作成します。私の場合、「60歳で8棟のアパートを所有し、月200万円の家賃収入を得る」という目標を立てました。これを例に、ロードマップを考えます。
現状分析
現在の保有物件:2棟
- 1号アパート:月収約21万円
- 2号アパート:月収約34万円
現在の月間家賃収入合計:約55万円
目標達成に必要な追加物件数の算出
目標家賃収入:200万円
追加で必要な家賃収入:145万円(=200万円 – 55万円)
1棟あたりの平均家賃収入:27万円(現在保有する2棟の平均)
必要な追加物件数:6棟(145万円 ÷ 27万円 ≒ 5.37棟)
年次別の購入計画
残り10年で6棟購入するため、およそ2年に1棟のペースで購入する必要があります。
資金計画
月200万円の家賃収入を確保するには、利回り10%として計算すると、合計2億4千万円相当の物件を保有する必要があります。8棟の保有を想定しているので、1棟当たりのアパート価格は3千万円(=2億4千万円 ÷ 8棟)です。
諸費用と頭金で物件価格の20%かかるとすると、1棟当たり少なくとも600万円の自己資金が必要でしょう。
- 1棟あたりの想定購入価格:3千万円
- 1棟あたりの必要自己資金:600万円
- 年間の必要貯蓄額:300万円(600万円 ÷ 2年)
具体的なロードマップ
以上から、次のような計画を作りました。
- 2024年:2棟の運営でノウハウを蓄積、資金準備にも注力
- 2026年:3棟目購入(600万円投入)
- 2028年:4棟目購入(600万円投入)
- 2030年:5棟目購入(600万円投入)
- 2032年:6棟目購入(600万円投入)
- 2034年:7棟目購入(600万円投入)
適宜計画を修正しながら目標に進む
実際には物件を購入していくと自己資金が貯まるスピードがどんどん増えますので、生活に大きな変化がなければ購入速度は上がります。
一方、不動産賃貸経営をしていく中ではさまざまなリスクが発生します。大切なのはリスクを想定して対応することだと考えます。
不動産投資のリスクと対策
- 金利上昇リスク:なるべく固定金利で借り入れを検討。急上昇時は繰り上げ返済する
- 空室リスク:立地や物件の質、駐車場の有無にこだわる
- 修繕リスク:計画的に資金を積み立て、突発的な支出に備える
- 市場変動リスク:経済状況に応じて購入計画を見直す
私の所有物件で大規模修繕が発生したり、子どもの大学入学があったりと支出の増加も予想されます。そもそも3千万円、利回り10%のアパートが都合よく目の前に出てくるとは限りません。
老朽物件を入れ替える必要も出てくるでしょう。経済状況次第では、もっと自己資金を用意しないと融資を受けられなくなることも十分予想されます。
しかし、自分なりの購入計画を立てておくことは、やるべきことがはっきりするため、日々の活動をしていく中でとても重要です。
ゴール達成には環境づくりも大切
不動産投資の成功には、適切な環境づくりが欠かせません。知識の習得、人脈の形成、そして家族の協力などが大切です。
学習リソースの確保
なんでもそうですが、目標達成には継続して学び続けることが大事ですよね。書籍やセミナー、動画コンテンツなど、なんでもいいのですが、信頼できる学習リソースを確保し、知識を深めていくことが重要です。
ほんの一部ですが、僕もいろんな有名書籍から学ばせてもらいました。
- まずはアパート一棟、買いなさい! 資金300万円から家賃年収1000万円を生み出す極意(石原博光著、SBクリエイティブ)
- 不動産投資 成功の実践法則(長嶋修・さくら事務所著、ソーテック社)
- 不動産投資の羅針盤 豊かな不動産ライフを手に入れる一番わかりやすい教科書(林奏人・辻龍一・富治林希宇著、ソシム)
- NOをYESに変える「不動産投資」最強融資術(安藤新之助著、ぱる出版)
- 東大博士が書いた 石橋を叩いてでも成功したい人のための「不動産投資」大全(菅原吉祥著、ダイヤモンド社)
- 収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則(藤原 正明著、クロスメディア・パブリッシング)
- Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて(玉川陽介著、技術評論社)
専門家や仲間とのネットワーク構築
不動産投資の成功には、ネットワークが不可欠です。信頼できる不動産会社や大家仲間、リフォーム会社などの専門家とのつながりを築くことで、的確なアドバイスや良質な情報を得ることができます。
モチベーションを保つためにも、同じ志を持つ投資仲間との交流はとても重要です。投資家向けのセミナーやオンラインコミュニティに参加し、経験や情報を共有します。
私の場合、地元の不動産会社が運営する大家塾に入ったことが転機となりました。1棟目は自力で見つけた物件でしたが、自分1人の考えだけでは購入に至らなかったと思っています。
自分を置く環境は、とても大事です。
家族の理解と協力を得る
「え?不動産投資?危なくないの?」
借金をして不動産投資をすることを家族に説明した場合、こんな反応をされる方は少なくないでしょう。でも、この壁を乗り越えられなければ、長期的な投資は成功しません。
大切なのは、リスクを隠さず、でもメリットを明確にして丁寧に説明することだと考えます。
まずは、なぜ不動産投資をしたいのか、丁寧に説明することです。
「将来の生活をより豊かにするため」「会社に頼らない収入源を作りたい」など、家族の将来も含めたビジョンを示すことで、理解を得られる可能性が高まります。
不動産投資にはリスクがつきものです。これを隠さず、正直に伝えることも大切です。
空室リスク、予期しない修繕の発生、金利上昇の懸念などをしっかり伝え、対策を用意するのが重要になります。
いちばん重要なのは、家族のメリットを具体的に示すことです。「教育資金として毎月5万円を積み立てられる」 「老後の生活費を心配しなくて済むようになる」 「家族旅行の予算を増やせる」といったように具体的にイメージするのがおすすめです。
ふつうの会社員ならいきなり億単位の物件を購入するのではなく、小規模な物件から始めて経験を積み上げるべきだと思います。これなら家族も安心して賛同しやすくなります。
投資を始めた後も、定期的に状況を共有することが大切です。
私も購入してすぐに滞納が発生したとき、「いきなり滞納だよ~」と深刻になりすぎないように注意しながら対処法などの考えを妻と共有しました。
幸いその後すぐ入金されて助かりましたw
家族の理解は、不動産投資成功の土台になります。丁寧なコミュニケーションを心がけていきたいと考えています。
まとめ:自分らしい不動産投資の道を進もう
不動産投資のゴールは人それぞれです。重要なのは、他人の成功例をそのまま真似るのではなく、自分の状況や価値観に合わせたゴールを設定することです。
ついつい、他人の状況が気になって、焦ったり、嫉妬したりしがちですが、「自分らしい道」を描き、計画を定めておくことで、惑わされず進むことができます。
ゴールが定まったら、具体的な計画を立て、着実に実行に移しますが、途中には大小いろんなことが起きるはずです。
私はアパート経営をはじめてまだ1年ですが、ゴミが放置されている共用部の整理に戸惑ったり、居室内の消火器が何十年も放置されていて引いたり、買っていきなり滞納者が出て憤ったり、外壁が劣化しているのが分かって修繕費におびえたり……。
いろんなことがあります。
そうしたことも、自分で考え、家族や仲間に相談し、冷静に準備することで乗り越えられると思っています。
ゴールは固定的なものではありません。生活環境や価値観の変化に応じて、柔軟に見直し、調整していくことが大切です。自分らしい不動産投資の道を歩むことで、きっと充実した人生が待っていると信じています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
コメント