iDeCoと企業型DCの違いがよく分からない
そもそも確定拠出年金ってなんだろう
iDeCoと企業型DCは同時加入できるの?
iDeCoと企業型DC。よく耳にするようになりましたが、アルファベット表記でイマイチわかりにくい制度ですよね。日本語で確定拠出年金のことだよと言われても、年金ということ以外はわかりにくい。
この記事では、こうした疑問に答えます。
少子高齢化で社会保障制度の維持が危ぶまれる中、税金面の優遇を得ながら長期積み立て投資に取り組めるのが確定拠出年金。
その確定拠出年金の中でも、企業が掛け金を払うのが企業型DC、個人で払うのがiDeCoです。
2つの間には掛け金の払い方だけでなく、積み立て可能年齢の上限や税制優遇のされ方など違いもいくつかあります。
条件次第では併用もできる2つの確定拠出年金は、あなたの老後に欠かせない存在になりうる制度です。 しっかりと理解した上で、適切な運用で将来に備えていきましょう。
確定拠出年金は運用成績次第で受け取り額が変わる年金
確定拠出年金は、払った掛け金と、その運用結果に応じた年金が給付される仕組みです。掛け金を事業者が出す企業型DC(企業型確定拠出年金)と、個人が直接出すiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に分かれます。
なお、もらう年金額が決まっているのは確定給付年金(DB)といいます。
ちなみにiDeCoは「individual-type Defined Contribution pension plan」の頭文字からきたものです。長い……
まず日本の年金制度の確認からみてみましょう。
そもそも日本の年金制度は以下の3階建ての構造になっています。
3階 私的年金(加入は任意) ←確定拠出年金はここに入ります
2階 厚生年金(公的年金=会社員や公務員が加入)
1階 国民年金(公的年金=日本に住む20歳以上で60歳未満の全員が加入)
3階部分の私的年金は、企業の「厚生年金基金」と「確定給付企業年金」、そして個人型と企業型がある「確定拠出年金」に分かれています。
確定拠出年金に用意されている大きなメリットは税制優遇です。一般の投資と異なり、拠出した全額が課税対象から除かれます。
税金を節約しながら将来に備えられる制度だから注目されているんですね
運用益も非課税になるうえ、受け取り時にも税負担が軽減できるため、少しでも将来資金を効率的に確保しておこうと加入率が徐々に上がってきています。iDeCo公式サイト(https://www.ideco-koushiki.jp/)によると、2022年4月時点の加入率は242万人となり、2019年4月時点から倍増しています。
運用益の非課税の効果をみてみましょう。
たとえば毎月1万円を確定拠出年金にまわして利回り3%で複利運用できたとすると、30年後には元本が360万円、利益は222万円になります。
通常この利益222万円に所得税と住民税で合わせて20.315%の税金を支払う必要があり、その額は約45万円です。この45万円がまるまる手元に残る効果は大きいですよね。
ただし、あくまで受け取る年金は自分が選んだ投資商品の運用成績次第。結果によっては元本割れすることもありますから、しっかり投資の勉強をすることも大事になります。
運用する商品は確定拠出年金を運営管理する金融機関が扱う投資信託、定期預金、生命保険から好みに応じて選定ぶ方式です。給付は一時金としての受け取るか年金として受け取るかを選びます。
iDeCoは個人が加入、企業型DCは会社の福利厚生
確定拠出年金のうち、iDeCoは自分のために自分が加入する私的年金、DCは社員の福利厚生を図るために企業が導する年金制度です。
共通するのは運用商品を選ぶのはあくまで自分自身ということ。投資の基本的な知識を持って行う必要がありますが、iDeCoは自身で金融機関を選ぶ必要がある一方で、企業型DCは企業が従業員に「投資教育」を実施することが努力義務としてきめられています。
企業型DCの方が事務手数料が企業負担となるメリットもあり、投資に不慣れな人には企業型DCの方がハードルが低そうです。
主な相違点を以下にまとめます。
加入できる人
iDeCo
1 20歳以上60歳未満の自営業者と家族、フリーランス、学生(国民年金第1号被保険者)
2 厚生年金の被保険者(会社員と公務員=国民年金第2号被保険者)※企業型確定拠出年金に加入している人は非対象。ただし規約で認められていれば可
3 厚生年金の被保険者に不要されている20歳以上60歳未満の配偶者(国民年金第3号被保険者)
4 国民年金に任意で加入した人…60歳以上65歳未満の人
企業型DC
厚生年金被保険者 ※原則として70歳未満の会社員
掛金の上限額
iDeCo
1 自営業者やその家族 月額68,000円
2 厚生年金の被保険者
・会社に企業年金がない人→月額23,000円
・企業型確定拠出年金のみに加入している人→月額20,000円
・確定給付企業年金や厚生年金基金などのDBと、企業型確定拠出年金に加入している人、DBのみに加入している人、公務員→月額12,000円
3 専業主婦(夫)など→月額23,000円
企業型DC
月額55,000円 ※他の企業年金がある場合は27,500円。iDeCo同時加入可の場合は35,000円
積み立て期間
iDeCo
原則65歳まで
企業型DC
原則70歳まで
税制優遇
iDeCo
掛け金は全額所得控除可
企業型DC
事業主の掛け金 全額非課税
従業員の掛け金 全額所得控除可
確定拠出年金の積み立てで所得税はどれほど軽減できるのか
掛け金が所得から控除されるということはそれだけ所得税と住民税の納税額が少なくてすむことを意味します。
住民税の税率は所得に対しておおむね一律10%ですが、所得税は累進課税のため収入が多い人ほど高くなり、5~45%の間で変動します。
たとえば年間の課税所得が330万円超~695万円以下なら所得税率は20%。このときiDeCoで月額23,000円、年間276,000円の掛け金を出したとすると、
276,000×(20%※所得税+10%※住民税)=82,800円
上のような計算になり、82,800円の税負担がなくなります。20年間では1,656,000円も浮く計算です。
なお、確定拠出年金には所得控除のほかにも、
といったメリットがあります。
iDeCoと企業型DCは併用できるのか
ここまで見てきたように、iDeCoも企業型DCも税制上のメリットがたいへん大きい制度ですので、「両方使いたい」という人もいるでしょう。
企業型DCに加入している人がiDeCoに加入するには、企業で労使間の合意を得る必要がありますが、2022年10月からは原則加入できるようになります。
併用する場合、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛け金、これらの合計額はそれぞれ以下の通りであることが条件になります。
企業型DCの加入者がiDeCoに加入する場合
企業型DCの事業主掛け金 | 55,000円以内 |
iDeCoの掛金 | 20,000円以内 |
合計 | 55,000円以内 |
企業型DCと確定給付型に加入している場合
企業型DCの事業主掛金 | 27,500円以内 |
iDeCoの掛金 | 12,000円以内 |
合計 | 27,500円以内 |
また、iDeCoと企業型DCを併用する際の注意点として「マッチング拠出制度」があります。
マッチング拠出とは、企業型DCで会社が拠出する掛け金に加えて、本人が掛金を上乗せ拠出できる制度です。この制度を使っているとiDeCoを併用することはできません。
まとめ:デメリットにも注意して活用を
以上みてきたように、iDeCoも企業型DCも、税制上の優遇措置が多く、また運用成績次第では将来の年金受け取り額を増やして生活を豊かにできます。
条件次第では併用もできるので、効果を高めることも可能です。
ただ、確定拠出年金には、
といったデメリットもあります。
60歳まで原則として引き出せないとしたら、教育費や住宅の大規模修繕、医療費など近い未来に必要となるかもしれない資金までつぎ込むわけにはいきません。
あくまで余裕資金で運用するべきですね
金融機関が用意する運用用品には、定期預金や保険といった安全資産もありますが、投資信託で運用したいなら、経済情勢で大きく変動する恐れがあることを忘れてはなりません。
商品の特性を十分に理解の上、運用商品を選ぶ知識武装が必要です。
以上です。どうもありがとうございました!
コメント